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ぼくと仙人のヒミツ

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謎の仙人と少年の、不思議でおかしい交流を描いた児童小説。

大好評だった、『わらおうわらおう せこ三平のゆかいな童話集』に続く、せこ三平の第二作。

この本の制作中に、作者は東日本大震災にあいました。
その後、結婚して古河市に移住し、創作を続けています。

生きることは、愛すること。

抱腹絶倒の物語を読んだ後、心がほっこりあったまっている。

愛する人へ、大切な人へ、大好きな人たちへ、プレゼントにもピッタリです。

全国の書店でも、ご注文いただけます。

●店員のオススメひとりごと

切り絵とデザインを担当しました。よろしくデス!


■ せこ三平著 風詠社発行 星雲社発売

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ちょっと立ち読み:作品さいしょのページから
さらに詳しく…
 ヘンな人をひきつける才能、というものがあるらしい。
 ぼくは、よく、ヘンな人と遭遇する。
 そうぐうするって、わかる?
 出くわすってこと。
 「ヘンな人にホイホイついて行っちゃいけません」ってママが言う。
 でも、ぼくはなぜか、ヘンな人が嫌いじゃないんだ。
 どちらかというと、「まともな人」って言われてる人の方が苦手なんだ。
 たとえば、親せきのとおる兄ちゃん。
 日本でいちばん有名な大学に入った兄ちゃんだけど、はっきり言ってつまんないことしか言わない。
 「せっけんで手を洗わないと、ばい菌が入って、病気になっちゃうぞ」とか言って、とおる兄ちゃんは、何度も何度も手をゴシゴシ洗う。
 ぜんぜん洗わないのも問題だと思うけど、あんなに何度も洗わなくていいのに。
 「しっかり勉強して、とおる兄ちゃんみたいなまともな人間になりなさい」って、パパもママも言うけれど、ぼくはぜんぜんとおる兄ちゃんみたいにはなりたくない。だって、とおる兄ちゃんは、ばい菌がこわいんだ。あんなにばい菌がこわくて、心配ばかりしている人生なんて、幸せだとはとても思えない。
 ところが、パパとママは、このままではぼくが、「ヘンな人」になっちゃうと思って、心配しちゃったらしい。最悪なことに、ぼくに家庭教師をつけることにしたのだ。
 その家庭教師とは、ほかならぬ、とおる兄ちゃん。
 冗談じゃない!
 ただでさえ勉強なんかしたくないのに、とおる兄ちゃんといっしょに勉強するなんて、考えられない。
 今日は遊ぶぞーって、ふくらんでた心が、ショボーンって、ちっこくちっこくちぢんじゃった。
 とおる兄ちゃんが来る日、ぼくは黙ってこっそりと家を出た。
 かまうもんか、すっぽかしてやる。
 あとでおこられるかもしれないけど……あとのことは考えるのはよそう。
 こんな時、大人ならどうするのかな。
 きっと、居酒屋にでも行って、お酒を飲んで、嫌なことは忘れるのかも。
 ぼくは居酒屋には行けないから、近所の駄菓子屋に行った。そして、ソースせんべいのやけ食いをした。
「げぷっ。おばちゃん、もう一枚」
「そんなに食べちゃ、体に毒よ……」って、おばちゃん、小料理屋の女将じゃないっつーの。
すると、駄菓子屋に、下駄を鳴らして中年のおじさんが入ってきた。長髪に、ひげもじゃで、黒ぶちの分厚い眼鏡をかけ、うす汚れた白衣を着ている。
 「マッド・サイエンティスト、おちゃわかす博士が、ヘソで茶をわかーすっ。アハハハハ。おばちゃん、バクチクとかんしゃく玉ちょうだいな」
ああ、またヘンな人と遭遇してしまった……。
駄菓子屋のおばちゃんは、おじさんを見ると、ちょっと嫌な顔をした。
「困りますよ、久米さん。またバクチクを鳴らして、あんなせまいアパートですから、近所から苦情が出てますよ」
「久米さんじゃないのっ。おちゃわかす博士って呼んでっ」
「フンッ」
「なんだよ、おばちゃん、冷たいなあ。バクチク鳴らすのは研究のためなんだからしょうがないでしょ」
 「いい歳して、科学者ごっこはもうやめてくださいよ。昼間からお酒飲んで、部屋にいっぱいゴミを持ち込んで……」
 「ゴミじゃない。研究材料や。お酒じゃない。お茶けや。こんなものは、お茶に毛が生えたようなもんじゃ。ゴクゴク」
 おじさんは手にした缶ビールをゴクゴクと飲んだ。
 「ういー、うまいお茶けだ」
 「もうっ、いいかげんにしてくださいよ。どうしてそんなに飲むんですか」
 「おばちゃん、なんにもわかっちゃいないんだねえ。わしがやろうとしていることは、科学と芸術の融合という、たいへんな仕事なんだ。いいかい、サイエンスはアートなのだ」
 「サイザンスか?でも、それとお酒とどんな関係があるの?」
 「緊張するんですよ。あんまり偉大な仕事だから……。これが飲まずにやってられないでしょう、なあ、ぼうず」
 いけね。話しかけられた……。
 「おい、ぼうず、ヘソが茶をわかしとるか?」
 「は?」
 「ヘソが茶をわかしとるか、ときいておる」
 「なんのことやら……」
 「この世界は、おかしくてたまらん、楽しいことでいっぱいなんじゃ。小さい子供は、みんなそのことを知っている。でも、人間はそのことをだんだん忘れてしまうんじゃ。ヘソでお茶なんかわくわけないと思い込んでいるじゃろう?それは違うぞ。わしはヘソで茶をわかす、おちゃわかす博士じゃ。科学は、人間を幸せにするためにある。科学の力をもってすれば、人間はどんな不思議なことでもできるんじゃよ。破壊と殺りくの時代はもう終わった。科学を使いこなすだけの高い精神性を、われわれ人間は身につけなければいかん。そこにわしの仕事の意義があるのじゃ。創造じゃ。芸術じゃ。生命とテクノロジーが奏でる、運命的な交響楽じゃ。これぞ、ヘソ茶シンフォニー、作品への一番、ブーッ」
 おじさんは、一発、おならをブーッとした。
 駄菓子屋のおばちゃんは、怒った。
 「ちょっとお、いいかげんにしなさいよ、あんた。わけのわからないことベラベラしゃべって、オナラして……。ただの酔っ払いのヘンなオヤジじゃないか。もう帰っとくれよ、ほらほら」
 おばちゃんは、はたきをパタパタさせて、おじさんを店から追い出した。
 驚いて、ぼくまでいっしょに店の外に出てしまった。
 おじさんと目が合った。
 おじさんは、ニヤッと笑って、言った。
 「よう、ぼうず。わしんちに遊びに来るか?」

 ヘンな人にホイホイついて行っちゃいけない……ママの教えが頭をかすめたけど、ぼくは結局、ホイホイついて行ってしまったのだった。
 なぜだかは、わからない。でも、この、自称おちゃわかす博士には、なんだかあらがえない、強い磁石みたいな引力があったのだ。


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